圧縮記帳を理解するには、法人税等の計算方法を知る必要があります
会社は、毎年一回、財務諸表を作成して、法人税等(法人税、住民税及び事業税)を納付しなければなりません。
法人税等は、原則として、収益から費用を差し引いた利益に、税率を掛けて算出します。
収益 − 費用 = 利益
利益 ✕ 税率 = 法人税等
したがって、収益が多ければ多いほど、費用が少なければ少ないほど、利益が多くなり、納付する法人税等も多くなるということになります。
国庫補助金
地球環境に優しい固定資産を購入する場合など、その固定資産の購入代金に充てるためのお金を、国から交付される(もらえる)ことがあります。
このお金を、国庫補助金といいます。
そして、国庫補助金をもらった場合、国庫補助金受贈益(収益)で仕訳します。
圧縮記帳
国庫補助金受贈益は、収益です。
収益が多くなれば、利益も多くなり、納付する法人税等も多くなります。
つまり、国庫補助金には、税金がかかるのです(国庫補助金をもらった場合、法人税等を納めなければならないのです)。
例えば、地球環境に優しい建物を購入するとき、国庫補助金をもらっても、これに税金がかかってしまうのです。
税金がかかると、結果的に国庫補助金が減ってしまい、建物が購入できなくなり、何のために国庫補助金をもらったのかわからなくなってしまいます。
このような、国庫補助金をもらったにもかかわらず、税金の納付で、固定資産が購入できなくなるのを防ぐために設けられた制度が、圧縮記帳です。
圧縮記帳の仕訳
例えば、国庫補助金をもらって収益計上した場合に、その国庫補助金で取得した建物について、収益計上した国庫補助金の金額だけ、建物の帳簿価額を減らして費用計上します。
具体例(1)
国庫補助金1,000の交付を受け、その補助金と自己資金を合わせて建物1,500を取得した。
« 仕訳① »
(借方)
現金 1,000
建物 1,500
(貸方)
国庫補助金受贈益 1,000
現金 1,500
上記の仕訳①において、国庫補助金受贈益が収益計上され、このままでは法人税等が課税されてしまいます。
そこで、圧縮記帳により、下記の仕訳②をすることが認められます。
« 仕訳② »
(借方)
固定資産圧縮損 1,000
(貸方)
建物 1,000
上記の仕訳②により、固定資産圧縮損が費用計上され、国庫補助金受贈益1,000と固定資産圧縮損1,000は相殺され、結果として利益は生じなくなり、課税されないことになります。
ただし、国庫補助金1,000をもらっても圧縮記帳をすれば課税されないで済む、というわけではありません。
上記、仕訳①の建物1,500と仕訳②の建物1,000は相殺され、建物の帳簿価額は500になります。
本来は、建物1,500を取得しているため、耐用年数にわたり、1,500の減価償却費を計上します(残存価額はゼロと仮定します)。
しかし、圧縮記帳を行い、建物の帳簿価額を500とすることで、耐用年数にわたり、500しか減価償却費を計上しないことになります。
減価償却費が、1,500ではなく500になることで、耐用年数にわたり、1,000(1,500−500)の費用が減ることになります。
1,000の費用が減るということは、耐用年数にわたり、1,000の利益が増え、納付する法人税等も増えることになります。
つまり、国庫補助金1,000をもらった時点で課税されてしまうと、建物が購入できなくなってしまうので、圧縮記帳を行って(固定資産圧縮損1,000を計上して)課税されるのを避け、耐用年数にわたり減価償却費を1,000少なくして(耐用年数にわたり利益を1,000多くして)、毎年少しずつ課税してもらうのが圧縮記帳です。
圧縮記帳には、課税を遅らせる(課税を繰り延べる)効果があるのです。
圧縮記帳は、理解するまでに時間がかかりますが、仕訳は難しくありません。
したがって、日商簿記検定試験などを受験される方は、早めに理解して、試験に出題されたら確実に得点しておきたい分野です。